LayerX エンジニアブログ

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開発爆速化を支える経営会議や週次定例の方法論 〜LayerXの透明性への取り組みについて〜

こんにちは。松本(@y_matsuwitter)です。GWはカレーを沢山作っていました。スパイスから作るカレー、思ったよりも手間が掛からないですね。インド料理にハマる波が数年置きにやってきます。

本日は、最近いくつかのイベントでの議論を通じて感じた、開発組織づくりにおいて見られる共通のパターンについて触れつつ、LayerXが意識している取り組みを書いてみようと思います。

各社で見られる最近の組織傾向

ここしばらく、Ubieさんや10Xさん、CADDiさんやAWSさんでのイベントにおいて開発組織の在り方について対話してきました。どの企業も非常に尊敬できる、また学ばせていただいているチームになります。その中から、特に数十人規模までの組織で見られる共通項としていくつかの要素が存在することに気づきました。大雑把に上げてみると以下のような事柄になります。

  • 我々らしい文化とは何か、常に考え言語化し浸透を目指す
  • 透明性に対する狂気的こだわり
  • 文化マッチを重視した採用
  • 責務の分割と過剰とも言える信頼と委譲
  • 事業そのものへエンジニアも取り組む
  • 開発速度へのこだわり

これらの中から、特に透明性という部分について取り上げてみようかと思います。

狂気的な透明性の取り組み

直近、透明性に対してNoという会社はスタートアップの中では少なくなってきたと思います。大きな企業の中でもデジタルと向き合う過程でだんだんとその重要性が認識されているのではないでしょうか。

透明性はなぜ重要かと言われれば、端的には自律分散的組織作りのためとなるのかと考えています。それぞれの組織が独立して、しかも組織全体から見て正しい意思決定を自律的に行うためには、同じ情報が共有され、さらにその情報を同じ土台の上で構造化し咀嚼できる必要があります。

同じように情報を取得し、解釈できることで、開発で言えば、迷ったらどう設計するか、どの開発を優先するか、を正しい方向で行うことに繋がります。

開発組織において自分がもっとも重要だと思うこと、それは「何を作り、何を作らないか」という意思決定だと考えています。ソフトウェアアーキテクチャも、エンジニアリングマネジメントも技術選定も、どれもこうした優先度や戦略の元に決まります。

そして速度を優先する組織では、それぞれが独立して意思決定することが多く発生します。正しい意思決定が行われるには、先の透明性を意識した土壌の上で「今我々はこういう方角を向いていて、このような事柄を重視する」という戦略とそれを支える根拠を一人ひとりが理解できることが重要です。背景知識が共通であることで、何を作るか、何を作らないかについて、それぞれのチームや一人ひとりのメンバーが安心して、自信を持って判断できます。

これをもっとシンプルに言うと、会社全体にわたって、一人ひとりが同じ優先度リストを持っていることが、スプリント計画や技術的意思決定、負債との向き合い方に統一性をもたらし開発速度を高めるということになります。爆速化には透明性がセットです。

透明性の要件

爆速化を支える透明性には、情報が公開されていることに加えて3つの要件があります。それは①情報が理解しやすいフォーマットであること ②情報を確認する習慣・場が作られていること ③しつこいまでの情報の能動的なインプット、の3つです。

情報はただ置いてあるだけでは咀嚼できません。理解しやすい形である事が必要です。そのためには、フォーマットが改善され続けていることが大切です。例えば、週次でレポートを出しているのであれば、より一人ひとりが理解しやすい方法とはなにか、そのために必要な補足情報とはなにか考えてみましょう。また、そもそも理解しやすいのかフィードバックを定期的にもらうことも有効です。

さらに、こうした理解しやすい情報も、触れてもらわねばなかなか浸透しません。ですので、時間や場所の工夫が有効です。同じタイミングで発信されたり、いつもこの場所に置いてある、ということが周知されることで情報を必要とする人、伝えておくべき人がその情報を得ることができようになります。週次定例などはそうした仕組みに繋がりますね。

同じ事柄を説明するにあたっても、もし重要な事柄なのであれば一つの文書を用意して終わりとせず、それを発信するための様々な手段を考えてみましょう。情報の伝達においては、そのしつこさも重要です。一つの方法で伝わるとは限らず、例えばそれを口頭で会話する、文書で伝える、外部のメディアでも発信する、1on1で対話する、目標設定の中に盛り込むなど様々な手法を取ることが大切です。徹底してインプットすることでやっと浸透するくらいに考えていきましょう。

ちなみに蛇足になりますが、もしこれをお読みの方が大きな組織(具体的には数百名以上)を運営されている場合は、その伝達経路も意識すると良いかもしれません。情報は信頼されている人から伝達されているほど浸透率が良くなります。組織内の信頼関係のネットワークを意識して、適切な人へ充填的にインプットしていくとより浸透度が高まるのではないかと考えています。

LayerXの経営会議と週次定例の役割

ここまで述べてきた透明性という取り組みにおいて、LayerXでは経営会議や経営合宿をできる限り透明化するということを進めてきました。

経営会議では、経営の意思決定についてセンシティブな項目(特に採用条件など人事的な決定)を除き全てを公開しています。議事録には公開可能な全ての会話を記録しており、過去全てに渡り参照することが可能です。

実際に入社された方がこうした議事録を遡って読んでいるケースもあり、これを通じて会社の変遷を知る、それによって今の取り組みの位置づけを理解するということにもつながっているかもしれません。活用は人それぞれですが、大事なことは知りたい時に知れるということかと思います。

また、経営合宿で決まった大方針は常に「羅針盤」と呼んでいるスライドにまとめ全社に共有されています。この羅針盤を元に、週次の経営会議での意思決定が進み、その過程を全て見れるようにすることで一人ひとりが自分の取り組みの理由を知ることにつながってほしいと考えています。

さらに週次の定例では、こうした経営会議の意思決定された事柄・戦略やそれに関連する学びを福島CEOから20分程度話をし、さらに各事業の責任者から事業のアップデートを共有する時間を設けています。このフォーマットを通じて、全社の優先度リストを最もわかりやすくインプットすることにつながっていると感じています。合計で1時間半を毎週割いており、多少長いと感じる方もいるかもしれません。しかしこれが結果として意思決定を迅速に行える爆速な開発体制を維持することにつながっています。

最近では、この週次定例を経営会議直後に移動し、経営会議の意思決定をフレッシュなうちに全社にSyncする場として活用しようという取り組みをスタートすることになりました。議論内容やその背景を即座に全社に伝達することでより素早い浸透を目指し、会社全体が一つの生き物として動けるような形を目指していきたいところですね。

明日からできる3つの初手

もしこれをお読みの皆さんのチームでここまで書いてきたような取り組みをやってみようとお考えの場合、まず初手として取り組むと良さそうな、透明性を高めるための3つの事柄を書いて終わりにしようと思います。

まず1つが、今の会社の重要事項リストをとりあえず上から3~5つ並べて全員で共有してみましょう。案外と、厳密な優先項目リストを書いてみようとすると曖昧になっている事が多かったりします。特に成長中のスタートアップですと、まだ組織サイズが10名以下だった頃の名残で暗黙的にこれが進んでいることも多い印象です。意図的にこうした全社での優先度リストをまず書き出してみましょう。可能なら、さらにそれをブレークダウンして各チームレベルでも書き出してみると良いかもしれません。

次に、こうした重要事項リストと今のチームでの取り組みがどれだけ沿っているか、開発項目のバックログを洗ってみましょう。開発項目のリストを一列に、優先度順に並べて見た時に今取り組んでいるものがその通りになっているか考えてみてください。

最後に、この会社としての重要項目リストが定期的に更新・共有されるような仕組みを今すぐCEOやProduct Ownerと話して作ってみましょう。月次でも四半期でもOKです。特に、重要項目のリストが変化したときは「なぜそれが変化したのか」を明確に伝える仕組みが大切です。何をやるか決めるとき、その背後にある「なぜやるか」があるかどうかで行動の精度が大きく変わってきます。

最後に:一緒に事業を作りませんか

なぜLayerXは透明性を重視しているのか、それは「すべての経済活動を、デジタル化する」ためにほかなりません。一つの事業・一つのプロダクトで全ての経済が変わるわけではなく、今時点でもLayerXインボイスや三井物産デジタル・アセットマネジメント及びLayerX Labsの3つの方向からアプローチをしています。様々な事業・組織をうまくアラインする、同じ考え方や優先度リストを持った上で推進していくには透明性を高めていかねばなりません。

まだまだ、取り組みは始まったばかりですが、今後も次々新たな取り組みに乗り出そうと考えています。そうした機会を、これをお読みの皆さんと取り組みたいと考えています。新規事業も、今の事業のグロースも爆速で進めていきます。

一緒にこの挑戦へ参加してくださる方、常に募集しています。プロダクトマネージャからテックリード、セールスなど全方位でお待ちしております!

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