LayerX エンジニアブログ

LayerX の エンジニアブログです。

プロダクトとは願い

この記事はLayerX Tech Advent Calendar 2022の25日目の記事です!

LayerXの mosaと申します!もう2022年も終わりですね、お疲れさまでした!

LayerXには複数の事業部がありますが、僕は「バクラク」という、ハタラクをバクラクにするためのSaaSを開発しています。今年はバクラク経費精算、バクラクビジネスカードがリリースされたり、Machine Learningのチームが本格的に立ち上がったり、開発生産性を高めるEnabling teamが発足したりと、沢山のことがありました。

僕はポジションでいうと「事業部CTO/CPO」という名前でして、プロダクトや開発組織全体を見つつも、特に新しいプロダクトをゴリゴリ前線で開発する立ち回りをしています。

この記事では、新規プロダクトを立ち上げていくなかで、特に悩みが多かった話を書いていきます。

バクラクの開発における考え方

バクラクはありがたいことに、多くのお客様に使われるようになってきています。シリーズの導入社数は3000社を超えました。「使いやすい」「サポートが迅速」等、ありがたい声もたくさんいただいています。 多くの方につかっていただいていることは、多くの方の業務負荷を改善しているということで、大変嬉しい限りです。

一方、マーケットが広がったり、お客様の属性が増えてくる中で、業務フローや求められるものも多様になってきます。 あるお客様に求められる機能が、他の業務フローにとっては特に意味をなさなかったり、むしろ認知負荷をあげてしまったり、使いづらくする機能となります。

バクラクでは爆速開発のために、「使われないものを作らない」を徹底しています。ご要望でいただく「How」そのものを作るのではなく、必ず裏側の業務フローや「Why」を理解し、一段階抽象化し、本質的な課題と複数の要望を解決するシンプルな機能をつくるようにしています。どんなに綺麗につくっても、つくったものは必ず負債になるからです。

www.slideshare.net

しかしそれにも限界が出てくるときもあります。

ヒアリングを重ねる中で見えてきたもの

バクラクでは、お客様にたくさんのヒアリングをさせていただいております。リリース前は代表の福島自ら何十社もヒアリングしていました。

ときどき、「ユーザーは自分がほしいものを理解しているとは限らないので、ヒアリングばかりしていても本物はつくれない」という話を聞きますが、これはtoBにおいてはあまり当てはまらない気がしています。 そこには確実に「しなくてはいけない業務」が存在し、その中でユーザーが感じている負が存在します。それを丁寧に深堀りしていくことは本質的なプロセスだと思っています。(もちろん、Howのところは自分で考える必要があります。)

さて、現在バクラクではさらなる課題解決のために、ある大型のアップデートを予定しています。 そのためのヒアリングで見えてきたものは、各社解決したい課題はあるものの、根本的に異なる種類の業務フローと、それに対応した解決策がありうるということでした。

ここでは詳細までは話せないのですが、以下のように解決策のパターンが分かれました。

パターン1

  • ◯今までにない課題を解決できる、新しい方法
  • ◯現状のお客様層には受け入れてもらえそう
  • ✗ 一方新しいため、お客様の認知負荷はあり、使いこなせない可能性もある

パターン2

  • ✗ 目新しい方法ではなく、他社プロダクトでも採用されているが、新しい課題は解決しない
  • ◯ 慣れている方にとっては認知負荷は低い
  • ◯ まだあまり使われていないお客様層の業務フローにおいては求められそうで、TAM(市場規模)は大きいのではないか

実際には、この2つのパターンの亜種が無数にあり、一挙に解決できるものがないか考え続けていました。さらに言えば、ここまで整理するのにもたくさんの時間がかかりました。毎日案が浮かんでは、次のヒアリングにて撃沈する、右往左往する日々が続きました。

どのように意思決定したか

まず、本質的に異なる業務フローを、1つの機能で一気に解決することを諦めました。正直、無理なことを認めるのにも時間がかかりました。

その上でどちらの方法を取るか。パターン1で新しい課題を解決すべきか、パターン2で慣れている人にとってのわかりやすさや、まだ見ぬ市場規模をとるか。

めちゃくちゃ悩んで、色んな人にも相談した結果、結局バクラクらしい選択ってなんだろう、という基本に立ち返りました。圧倒的に使いやすいプロダクトを提供し、ハタラクをバクラクにすること。お客様にAHAを提供すること。

今までにない課題を解決できるパターン1を、いかに認知負荷をさげて自然に提供するかに頭をつかった方がバクラクらしいんじゃないかと。 僕らが提供したい業務フローはパターン1で、むしろこれが今後の主流になると思うべきではないか。

(そして究極的には2つの機能は両立しうる、後からパターン2を提供し、選んでもらうことは出来る、という整理をしました。開発は勿論、売る側のビジネスサイドはとても大変になるのですが…)

エモい話になりますが、結局「プロダクトとは願い」なんだなと思いました。

願いのイメージ図

キングダムの李斯のセリフにも「法とは願い」とありますが、「プロダクトとは願い!ユーザーに望む業務のあり方の理想を形にしたものだ!」ということなのかなと。

もちろん、無理に押し付けるものではなく、自然とこっちの方が楽だよね、と思えるようなものを提供する前提です。

これはまだ世に出ていない機能の話であり、はっきりいって失敗する可能性もあります。でも、今回は願いをこめてみました。

さいごに

LayerXでは、最高の体験を追求するメンバーと、それを届けるメンバーを全方位に募集しています。楽しいですよ!!!!

jobs.layerx.co.jp

それではみなさま、良いお年を!願いをこめて。

おまけ

あまりにも悩みすぎて、ChatGPTにパターン1, 2のどっちが良いか質問したら、以下の回答が返ってきました。まじですごい。ビジョンの話なんてしてなかったのに…

SaaSアプリケーションの新機能の仕様に関して、難しい決断を迫られているようですね。このような場合、最適な判断を下すために、いくつかの異なる要素を考慮することが有効です。

まず、顧客のニーズに優先順位をつけることが重要です。ある選択肢は新しい価値を提供し、既存顧客にもフィットするかもしれませんが、複雑すぎて効果的に使うことができないかもしれません。一方、もう一つの選択肢は、新しい価値を提供しないかもしれませんが、お客様にとってはよりシンプルで使い勝手がよいかもしれません。どちらの選択肢がお客様にとって最も有益なのか、追加の顧客調査やアンケートを実施して、より多くの情報を収集することを検討してください。

もう一つ考慮すべきは、それぞれのオプションの潜在的な市場規模である。あるオプションが新しい価値を提供したとしても、その価値の市場が小さければ、追求する価値がない場合もあります。一方、もう一つの選択肢は新しい価値を提供しなくても、潜在的な市場規模が大きければ、投資価値がある可能性があります。

最後に、自社の長期的な戦略の方向性と、各オプションがそのビジョンにどのように合致するかを検討することも有効でしょう。例えば、ある選択肢が会社の使命や目標により近いものであれば、たとえそれがより複雑であっても、潜在的な市場規模が小さくても、より良い選択肢となり得る。

最終的には、これらの要素やその他の要素の組み合わせによって決定されます。最適な決定を下すためには、チームの他のメンバーと相談したり、外部の専門家に依頼したりすることが有効な場合もあります。