はじめまして、LayerX AI・LLM事業部でテックリードをやっているisamisushiと申します。 今回は我々が取り組んでいる「エージェント的ワークフロー (Agentic Workflows)」についてご紹介します。
AI・LLM事業部では、Ai Workforceというプロダクトを開発しています。Ai WorkforceはLLM(大規模言語モデル)を活用したワークフローエンジンであり、LLMを用いて各種ビジネスドキュメントワークを効率化、自動化することを目的としています。 契約書、提案書、発注書、決算書など、多様なビジネスドキュメントを読み込み、変換・整形・情報抽出・整理などの処理を、LLMを活用して実現しています。
Ai Workforceの精度をさらに向上するために、エージェント的ワークフローに注目しています。本ブログでは、その取り組みについて紹介したいと思います。
エージェント的ワークフローの歴史
エージェント的ワークフローという概念は、2024年にAndrew Ng氏によって広まりました。彼はLLMを単なる言語モデルとしてではなく、自律的な意思決定と行動が可能なエージェントとして活用する新しいアプローチを提案しました。この概念は、AIの実用化における重要な転換点として注目を集めています。
なぜエージェント的ワークフローなのか
エージェント的ワークフローを採用する理由は、従来のワークフローエンジンでは対応できない複雑なビジネスプロセスを効率的に処理できるためです。このアプローチには、柔軟性、自律性、学習能力、スケーラビリティなど、多くのメリットがあります。事前定義されたルールに縛られず、コンテキストに応じて適切な判断が可能であり、人間の介入を最小限に抑えながら自動的にタスクを実行します。また、処理結果からフィードバックを取得し、継続的に改善することで、ビジネスプロセスの効率化と自動化が実現します。さらに、エージェント的ワークフローは、高い精度でタスクを実行し、エラーを最小限に抑えることができます。これは、LLMが豊富なデータを学習し、複雑なパターンを理解できるためです。
ルールベースワークフローとエージェント的ワークフロー
ルールベースワークフローは、固定されたルールとフローに基づいて動作し、予測可能な処理を実行します。一方、エージェント的ワークフローは、LLMの能力を活用して、コンテキストに応じた柔軟な判断と実行が可能です。主な違いは、ルールベースワークフローが「ルールベース」であるのに対し、エージェント的ワークフローは「コンテキストベース」である点です。これにより、より複雑で多様なビジネスプロセスに対応できるようになります。
ルールベースワークフロー:
ルールベースワークフローをエージェント的にするためには、以下のステップを踏むことが重要です:
- 計画: タスクの目的と必要なステップを明確に定義
- 実行: 適切なツールやリソースを使用してタスクを実行
- 振り返り: 処理結果を評価し、改善点を見つけて反復
エージェント的ワークフロー:
AI・LLM事業部での具体的な取り組み
エージェント的ワークフローに向けての最初の取り組みとして、我々のAi Workforceでは、ルールベースのワークフローに”Human in the loop”を組み込むことで、各タスクの精度向上を実現しています。LLMの出力結果を人間が確認し、不適切な出力を検知して即時フィードバックを行うことで、システム全体の品質を維持しています。このフィードバックは学習データとして活用され、プロンプトの最適化やモデルの微調整に活かされています。
特にビジネスドキュメント処理においては、業界固有の用語やフォーマットへの対応が重要です。我々は専門家の知見をプロンプトに反映させることで、ビジネスドキュメント特有の文脈を正確に理解し、処理できるようになっています。エラーケースの分析と分類を通じて、継続的な改善サイクルを回すことで、単純なルールベースの自動化を超えた、高精度なドキュメント処理を実現しています。
最後に
エージェント的ワークフローという新しい概念で、エンタープライズの業務自動化を革新していきたいと考えています。LLMを使った新しいアプローチに興味がある方、一緒にチャレンジしてみませんか?採用情報はこちらからご確認いただけます!
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