バクラク事業部 PlatformEngineering 部 SRE グループマネージャー 兼 コーポレートエンジニアリング室長 兼 執行役員 CISO の @kani_b です。
タイトルがほぼ感想ですが、6月25日~26日に開催された AWS Summit Japan 2025 において、 LayerX は基調講演・事例セッション・ブース展示のそれぞれで登壇・発表をさせていただきました。 7/11 (金)、 つまり明日までオンデマンドで配信されているようですので、参加されていない方はぜひ映像もご覧ください。
私自身、社会人になった2013年からほぼ毎年 AWS Summit Japan (Tokyo) には参加していますが、今年の AWS Summit Japan はたくさんの機会をいただいたこともあり、特に思い出深いものになりました。せっかくなので、基調講演やセッション、ブース展示などについて、振り返りという形で紹介させていただきます。
基調講演
基調講演では、当社代表取締役 CTO の @y_matsuwitter より、我々がミッションとする「すべての経済活動を、デジタル化する」ことに向かうための挑戦についてお話させていただきました。

メインプロダクトの一つであるバクラクは、「働くをラクに。ラクをもっと創造的に。」をビジョンとするプロダクトです。その根底には、日本の人口減少に伴う労働需給のギャップ、採用競争の激化、働き方の変化といった、LayerX が解決したい課題があります。 バクラクには、圧倒的に使いやすいプロダクトを届けることでその課題を解決する信念があります。その表れが、講演でも紹介させていただいた「AI-UX」という考え方です。
少し前の記事ですが、代表取締役 CEO の @fukkyy による記事や、プロダクト開発における取り組みをご覧いただけると、より詳しく理解いただけるかと思います。
バクラクと AWS
講演では、バクラクが多くの AWS マネージドサービスを利用していることについてもお話しました。 バクラクは、2021年のサービス開始からずっと、その基盤を AWS で構築してきました。その中でも、そのほとんどがマネージドサービス、 かつサーバレスサービスで構成されていることは特徴的といえます。バクラクは現状8つのプロダクトとプロダクト共通のアカウント管理基盤を持ち、100以上のマイクロサービスで構成されていますが、全てのアプリケーションは AWS Fargate を使った Amazon ECS および AWS Lambda で稼働しており、EC2 インスタンスは管理用途の3つしかありません。
データベースには Amazon Aurora for MySQL を採用しており、現在はその半数が Aurora Serverless v2 で動いています。 検索には OpenSearch が用いられていますが、それらのほとんどは Amazon OpenSearch Serverless です。
個人的にマネージドサービスやサーバレスサービスは、「コストを含む一定の制約を受ける代わりに運用負荷を大幅に削減するもの」と考えており、その恩恵をどこまで受けるかは常に考え続けなければならないものだと考えています。現在の我々は少人数 (SRE は実働3名) で、プロダクト開発に全力を注いでいることもあり、こうした選択をしてきています。当初考えていた通りの制約に悩んだりすることもありますが、それを上回る運用上のメリットを受け、高速にプロダクトを開発することができています。
バクラク AI エージェント
AWS とバクラクの関係だけではなく、講演では我々の新しい取り組みであるバクラク AI エージェントについても発表させていただきました。まだプロトタイプではありますが、基調講演内でデモ動画についてもご紹介していますので、ご覧になっていない方はぜひどうぞ。
こちらの実装には、内部的には Amazon Bedrock をはじめとした AI サービスを利用しています。現在 LayerX では Amazon Bedrock のほかに、 Azure OpenAI Service などを含めた AI サービスを実装に利用していますが、SRE の視点から見ると、 Bedrock は IAM 統合や他 AWS サービスとの連携、新たなモデル供給のスピードなど、 AWS を基盤としているプロダクトには魅力的な選択肢だと考えています。
なお先日、リアルタイムで経費精算や稟議の申請内容を自動レビューする AI エージェント「AI 申請レビュー」を発表しています。こうした新たな機能についても、色々な機会でご紹介していきます。
事例セッション
事例セッションでは、執行役員 バクラク事業部 CTO の @yyoshiki41 から、「Amazon Bedrock で作る未来の開発サイクルとオペレーション戦略」というタイトルでお話させていただきました。

こちらのセッションでは、バクラクで好評いただいている機能の一つである「パーソナライズド AI-OCR」という機能と、その実現における AI 活用についてお話しました。
パーソナライズド AI-OCR は、様々な値が含まれる帳票を読み取り電子化したうえで、ユーザーが真に利用したい項目を判別していく機能です。機能実現にあたり、機械学習モデルを自社で作成していますが、そのためには学習データと検証データが必要となります。これらデータを用意するうえで、学習データに対して必要な情報を抽出し、それぞれに正しいラベルを付与するアノテーション作業が欠かせません。このアノテーション作業を加速するため、システムを内製し、OCR したデータを LLM に読ませることで効率よくアノテーションデータを作成しています。
この実装において、 AWS Step Functions, AWS Fargate, そして Amazon Bedrock など各種 AWS サービスを活用しています。詳細については、発表資料を公開しておりますのでぜひご覧ください。
ブース展示
Expo の Startup Central においてブースを設け展示をさせていただきました。AWS を使ったアーキテクチャについてご紹介するというテーマで、バクラクの全体アーキテクチャについて解説しています。

バクラクは複数のプロダクトからなるサービスですが、それぞれが完全独立しているのではなく、それぞれのデータを統合することでシームレスで良い体験を提供できるようにしています。そのためにもプロダクト間の連携が不可欠です。これを実現するため、プロダクトをまたいで集約された GraphQL スキーマを導入し、 graphql-gateway と呼ぶ集約アプリケーションを使うアーキテクチャを採用しています。これらを動かすために、 Amazon ECS, AWS Fargate, Aurora Serverless などを積極的に利用している点については、上で紹介した内容と同じです。
ブースではこれらの実装や運用についてお話しました。当日、ブースにはたくさんの LayerX 社員がおりましたが、それを上回る勢いでたくさんの方にブース来場いただきました。(開始前は「1~2名で対応する感じでやりましょう〜」などと言っていましたが、完全に読みを外しました)
私も2日間の大半をブースで過ごしましたが、展示しているアーキテクチャに関することだけでなく、プロダクトそのものに興味を持っていただけた方や、基調講演・事例セッションを聞いて興味を持っていただいた方など、様々なトピックを持ち込んでいただき、非常に楽しくお話ができました。
ナイトイベント
夜は海浜幕張駅の近くで LayerX Cloud Drinkup というイベントも開催させていただきました。当日登壇した松本・中川だけでなく、私を含めた社員とゲストのみなさま合わせて20名以上の方にお越しいただき、楽しい夜となりました。 イベントの直前に Summit 会場で行われた QuizKnock さんのイベントにも参加させていただきましたが、私と @itkq で12位 - 13位フィニッシュとなり惜しくも壇上に立つことは叶いませんでした。対戦ありがとうございました。

おわりに
冒頭でも書きましたが、今年の AWS Summit Japan は特に印象深いものとなりました。 野村総合研究所様、三菱電機様といった日本を代表する企業だけでなく、Anthropic 様のような AI プラットフォームの先端を走る企業と並び、基調講演の場で自社を紹介する機会を得られたということは、新卒から15年ほど AWS に携わっている自分としても初めての経験であり、何より自分の仲間たちが基調講演・セッションといった大きな舞台で発表しているのを見るのはテンションが上がります。
加えて、今年は事例ブースに初出展させていただきました。毎年参加者としてブースを巡ったりはしていましたが、その経験だけでは想像のつかない大変さでした… ブースに立たれた方も多くいらっしゃると思います。大変おつかれさまでした。
Bet AI Day
さて、AWS Summit や本記事でもご紹介したバクラクの AI エージェント、そして Fintech や AI・LLM 事業といった他事業における詳しい取り組みをはじめ、我々の AI をつかったチャレンジをドシドシお伝えする自社カンファレンス「Bet AI Day」を 8/1 (金) に、そして7/23 (水) から7日間7名、49名が LT をする勢い1000%のカウントダウンイベント「7 Days LT」を開催します。 オンラインでも視聴いただけますので、詳しい話が気になったらぜひお申し込みください! 私からは 8/1 の Bet AI Day にて、「Bet “Bet AI” - Accelerating Our AI Journey」というタイトルで、AI サービスの全社活用やコスト管理、セキュリティといっただいぶ渋めの話をします!!!!よろしくおねがいします。
SRE NEXT
また、明日 7/11 (金) ~ 12 (土) にかけて行われる SRE NEXT 2025 にもスポンサーとしてブース出展しております!バクラクと AI・LLM 事業双方の SRE メンバーが、プロダクトの実際についてお話しますので、参加される方はぜひお立ち寄りください!!!!
それでは!!!!