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AIプロジェクト設計・課題設定において意識していること

こんにちは。LayerX Ai Workforce事業部R&Dチームのリサーチエンジニアの矢野目です。 この記事は LayerX Tech Advent Calendar 2025 20日目の記事です。

本記事では、「AIプロジェクトの設計・課題設定において、意識していること」というテーマで書いていこうと思います。

私はこれまで複数のAIプロジェクトに携わってきましたが、その中で、課題設定を曖昧にしたまま「技術ありき」で進めてしまうと、途中で方向性を見失ったり、完成した成果物がビジネス課題の解決に結びつかなかったりすることを痛感しました。それ以来、AIプロジェクトにおける課題設定の大切さを強く感じるようになりました。

そこで今回は、自分自身の思考のアップデートのためにも、主に「業務効率化」のAIプロジェクト設計時に意識している4つのステップを言語化してみます。同じ悩みを持つ方への共有になれば幸いです。

課題設計で意識していること

改めて課題設計時に考えていることを言語化すると、大きく分けて4つのステップに整理できました。

  1. Where分析:現状を可視化し、問題箇所を特定する
  2. Why分析:原因を構造化する
  3. What分析:どの問題をどの技術で解くかを設計する
  4. How設計:プロジェクトを設計する

順番に説明します。

① Where分析:現状を可視化し、問題箇所を特定する

やっていること

最初に、現状の業務フローを可視化しながら、どの部分がボトルネックかを特定します。誰が、何を、どの順番でやっているのか。各ステップにどれくらい時間がかかっているのか。これを把握しつつ、問題箇所を明らかにしていきます。

例えば、データマイニングツールを使った分析レポート作成業務であれば、以下のような工程表を作成します。

# 工程 担当者 作業内容 所要時間 頻度
1 依頼受付 分析担当 事業部からの分析依頼を受け、要件を確認 30分/件 随時
2 データ抽出 分析担当 各種DBからデータを抽出し、ツールに取り込み 2時間/件 随時
3 データクレンジング 分析担当 欠損値処理、異常値除去、フォーマット統一 3時間/件 随時
4 分析実行 分析担当 ツールで分析を実行し、結果を確認 1時間/件 随時
5 レポート作成 分析担当 分析結果をPowerPointにまとめる 4時間/件 随時
6 レビュー マネージャー レポート内容を確認し、フィードバック 30分/件 随時
7 納品 分析担当 事業部へレポートを納品、説明 1時間/件 随時

工程表を作成したら、「この作業に何時間かかりましたか?」「先月、何件の差し戻しがありましたか?」といった事実確認の質問をしながら、ボトルネックを特定していきます。

この例でいえば、「#3のデータクレンジングに全体の3割の工数がかかっている」「#5のレポート作成で差し戻しが多発している」といった事実を集めていきます。

なぜ大事か

改善前の状態を定量化しておかないと、後で「良くなったのか?」を測れません。効果検証のベースラインを作るために必要です。

また、全体の中でどこに問題があるのかを特定しないまま原因を考え始めると、たまたま目についた原因に飛びついてしまい、その原因はそこまでクリティカルではないということになりがちです。先に「どこ?」を明確にしておけば、ボトルネックとなっている箇所に全リソースを割けるようになり、効率的に問題解決ができると思っています。

この工程の難しいポイント

ただし業務フローが可視化されていないことが多く、工程を明らかにするのは非常に難しいです。また、担当者にヒアリングする時間を確保するのも簡単ではありません。

工夫点

工夫しているポイントとしては、仮説を持った状態でヒアリングに臨むという点です。具体的には、いきなりヒアリングをお願いするのではなく、まず過去の業務ドキュメントを読み込みます。

そこから「おそらくこういう工程でやっているのでは?」という仮の工程表をスプレッドシートで作成し、それをもとに担当者にヒアリングするようにしています。

参考書籍

Where分析の考え方は、 問題解決 ― あらゆる課題を突破する ビジネスパーソン必須の仕事術で学びました。

② Why分析:原因を構造化する

やっていること

問題箇所が特定できたら、なぜその問題が起きているのかを深掘りします。原因を構造化してまとめ、なるべくシンプルに整理するようにしています。

例えば、「データクレンジングに全体の3割の工数がかかっている」という問題に対して、原因を以下のように構造化します。

データクレンジングに工数がかかりすぎている
├── データソースごとにフォーマットがバラバラ
│   ├── 各事業部が独自のフォーマットで管理
│   └── 統一ルールが存在しない
├── クレンジング作業が属人化している
│   ├── 担当者ごとに処理ルールが異なる
│   └── 過去の処理パターンがドキュメント化されていない
└── ノイズ除去の判断に時間がかかる

なぜ大事か

原因の分析が浅いと、対症療法的な解決策になってしまいます。根本原因を押さえることで、本質的な解決策を考えられるようになります。

また、原因を構造的にまとめることで、関係者との認識合わせがしやすくなります。「この原因に対してこの打ち手を考えています」という説明ができるので、議論が具体的になります。

参考書籍

原因を構造的にまとめるという考え方は、君は戦略を立てることができるか 視点と考え方を実感する4時間がわかりやすかったです。

③ What分析:どの問題をどの技術で解くかを設計する

やっていること

原因がわかったら、どの問題をどの技術で解くのかを設計します。AIで解決できる部分はどこか、ルールベースで十分な部分はどこか、そもそも業務フロー自体を変えるべきかを考えます。

先ほどの例でいえば、以下のように整理します。

原因 解決アプローチ 手段
担当者ごとに処理ルールが異なる クレンジングルールの標準化 業務フロー改善(ツール導入不要)
ノイズ除去の判断に時間がかかる ノイズを自動判定できるようにする ノイズ除去アルゴリズム

そして、この中で、最小の労力で最大の効果が得られるものを選び、優先的に実行していきます。


④ How設計:プロジェクトを設計する

やっていること

最後に、プロジェクト全体を設計します。具体的には、以下のような項目を整理します。

  • プロジェクトの目的と目標
  • 成功条件
  • 不確実性(何がわからないか)
  • スケジュール
  • 検証項目

特に大事だと思うポイント

特に検証項目を設定することが大事だと感じています。業務効率化のAIプロジェクトは不確実性が高く、プロジェクトの初期段階では「本当にこれで工数削減につながるか」がわかりません。あくまで最初は仮説として置き、それを検証するためのポイントを明確にし、前に進むことが大切だと考えています。

「最低限これが成立しなければプロジェクトが成り立たない」という前提条件を洗い出し、それを検証項目として設定するようにしています。 例えば、以下のような項目です。

  • このデータセットでまず精度が出なければ、データの前処理方法を見直すか、別のデータソースを検討する
  • このユースケースで担当者から「〇時間は削減できそう」というフィードバックが得られなければ、アプローチを再検討する

このように、検証結果に応じて次のアクション(続行・軌道修正・撤退)を判断できる状態にしておくことが重要だと考えています。

最後に

ここまで、自分がAIプロジェクトの課題設計で意識している4つのステップを書いてきました。

振り返ると、すべてに共通しているのは「いきなり手を動かさない」ということかもしれません。現状を可視化し、問題箇所を特定し、原因を構造化し、適切な技術を選び、検証項目を設定する。この一連の流れを丁寧に踏むことで、「作ったけど使われない」という失敗を減らせると感じています。

もちろん、これがベストなやり方かはわかりません。プロジェクトの規模や状況によって、省略すべきステップもあるでしょう。引き続き試行錯誤を繰り返しながら、より良いやり方を模索していきたいと思います。 同じような悩みを持つ方の参考になれば幸いです。