LayerX エンジニアブログ

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データ領域におけるイネーブリング活動を10か月やってみた報告と今後の課題 #LayerXテックアドカレ #のびしろウィーク

今年の2月にデータイネーブリングはじめますという宣言をしました。

note.com

また、こちらの記事にもチーム設立の背景や課題についてまとめています。

tech.layerx.co.jp

10か月活動してみて、いろいろと解像度が上がってきたので、一度まとめておこうと思い筆をとりました。

そもそもイネーブリング活動とは何か

「イネーブリング」や「イネーブルメント」という単語は、「セールス・イネーブルメント」や「チームトポロジー」の文脈での使用が広がっています。

Salesforceの提供コンテンツでは、「成果を輩出し続ける人材育成の仕組み」としてセールス・イネーブルメントを定義しています。
https://www.salesforce.com/jp/resources/articles/sales/sales-enablement/

また、書籍『チームトポロジー』では、イネーブリングチームの最終的なゴールは「ストリームアラインドチームの課題に注力することで、ストリームアラインドチームの自律性を高めること」と定義しています。
https://pub.jmam.co.jp/book/b593881.html

また、今週公開された LayerX テックブログの記事では、「ワーキングメモリの大半を開発や実装に使えるようにすること」をバクラクにおけるイネーブリングチームの存在意義としています。
https://tech.layerx.co.jp/entry/2023/12/19/104004

イネーブリング活動について明確な定義はされていませんが、私は以下のように考えています。

育成とは、ヒトの能力を高める活動です。一方、育成とは異なりイネーブリング活動とは、仕組みや環境を整えることで、ヒトが生み出す結果や成果を増大させる活動といえます。

なお、育成とイネーブリングのどちらか一方を行うだけではなく、両方を活用することで相乗的な効果を発揮できます。

データ領域におけるイネーブリング活動とは何か

では、データ領域におけるイネーブリング活動、すなわちデータイネーブリングとは何でしょうか。ひとことで言えば、仕組みや環境を整えることで、データが生み出す価値を増大させる活動と言えます。

これがなぜ重要か。

https://www.dama-japan.org/Introduction.html

上の一般社団法人 データマネジメント協会 日本支部 (DAMA Japan) が提供するデータライフサイクルの図が分かりやすいですが、データは利活用できるまでの準備に膨大な作業を必要としますが、価値が生まれるのは利活用の瞬間だけです。

データ利活用に伴う環境整備が不十分だと、事業責任者も開発者も分析者も、みな等しく煩雑な準備からスタートしなければならなくなります。実際は大変すぎるので、使える範囲のデータでなんとかインサイトを発見し、価値創出に取り組んでいます。

仕組みと環境を整えることでデータ利活用の場面が増え、データが価値を生み出すチャンスを増やすことができます。

データマネジメントの活動では、データの収集・統合、品質向上、セキュリティ、プライバシー、アセスメントといった多くの仕事に追われます。これらの仕事は確かに重要ですが、データから価値を生み出すという目的を忘れないようにしたいです。

10か月活動してみて、やっとここまで解像度が上がってきました。

この10か月にやったこと・成果・学び

データチームの成果っぽいことも書いていきたいと思います。このセクションの次には課題と伸びしろのお話もしていきます。

データ基盤

  • Looker Studio の導入により、ダッシュボードの表現力と可用性が向上した。将来のセキュリティ対応に備えることもできた
  • 様々なデータソースがデータ基盤に統合され、これまで不可能だった横断的な分析が可能になった (多数のプロダクトのDB、各種ログ、スプレッドシート、GitHub、etc)
  • データのスナップショットを定期的に取得できるようになり、クエリ実行結果の再現性を担保できるようになった。例として、クレジットカードの与信業務の信頼性が向上した
  • データの日次差分だけを集計し、追加保存できるようになった。最終的に必要な結果を得るスピードが改善された (dbt の materialized = incremental)
  • コスト・予算の考え方を整理できた

チーム

  • チームのミッションや直近の戦略を言語化できた
  • データ基盤の開発ロードマップが策定された
  • チームの活動の型ができてきた
  • 外部発信や登壇といった発信を続けた
  • 私含めて専任3名、兼務1名の4人チームになった

学び

  • 全体影響を考える
  • 使われないものを作らない。言われた通り分析しない。
  • SQLとか分析スキルの前に仮説思考が大事
  • 生データに近いものだけをそのまま「はい、どうぞ」と渡しても、それで分析できるようになる人はほとんどいないが、そんな人たちがデータ基盤の初期ユーザーだった

あと、書いてないけどいろいろ失敗もしました。詳しくはカジュアル面談などで聞いてください!

これらの活動は、データチームが設立されなかったら実現されなかったと思います。一緒に活動してくれたみんなありがとう!!!

課題と伸びしろ

データ領域におけるイネーブリング活動を10か月やってみて、想像以上に難しかったなと感じます。この10か月はチームを作ることに最注力したため、イネーブリング活動があまり進みませんでした。

2024年はいよいよイネーブリング活動に注力していきますが、キーワードは「セルフサービス化」です。必要なデータを自分で発見でき、理解できる。データ収集の対象を簡単に追加できる。自分でエラーを修正できる。こういったことを実現していきたいです。

データ基盤はデータをBigQueryに載せたら終わりではなく、ユーザーがデータから価値を得られるようになるのがゴールです。プロダクト開発だけでなく、SaaSプロダクトにおけるカスタマーサクセスのような活動が重要です。

データ利用者のサクセス支援の第一歩として、仕組みと環境を整え、データ準備や分析業務のセルフサービス化を実現していきます。

まとめ

イネーブリング活動とは、データイネーブリングとは何かを議論し、10か月の成果とのびしろを共有しました。

書けなかったこともたくさんあり、詳しく聞きたい方向けに OpenDoor を実施しています。ぜひカジュアルに話しましょう!

jobs.layerx.co.jp