LayerX エンジニアブログ

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プロダクトマーケットマッピングを用いた開発ロードマップ作り~地図とコンパスを作ろう~

※ こちらは「LayerX Advent Calendar 」49日目の記事です。

こんにちは。SaaS事業部PdMエンジニアの花村(@naomasabit)です。先日TECH PLAYさんのPdMイベントで登壇させていただきました。そこで話したLayerXインボイスのプロダクトマネジメントで行っている方法論をご紹介しようと思います。

techplay.jp

イベントで使用したスライドはこちらです。ダイジェストの説明をこの後の章でしていきますが、詳細が気になる方は眺めながら読んでみてください。

speakerdeck.com

地図とコンパスを作ろう

プロダクトマネジメントではスコープがなく、ビジョンを実現するためにやるべきことを付加してやっていく、という動きになります。そのため、何をどの順番で作るべきかを定めるのがPdMの重要な役割です。

役割を果たすために「『地図』と『コンパス』を作ろう」と述べました。目的地と自分達のプロダクトの居場所を見つけるための地図と、行き先の指針となるコンパスが必要としています。

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地図の作り方

地図の作り方の手順は以下のように定義しました。

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1. ユーザーの要望を集める

1ではセールス・CS・ユーザー行動ログから要望を抽出しています。それぞれ、新規ユーザーからの要望、既存ユーザーからの要望、ユーザーの本音の行動としての特性を持っているため、満遍なく情報を取りまとめています。

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2. 集めた要望から機能要件を抽出し、3. 抽出した機能要件を求めている企業の属性を抽出する

2,3 では、抽出した要望を機能にし、求めている企業の属性をラベリングしていきます。例えば規模と業界の2軸で要望をまとめていきます。

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4. 機能と企業の属性(市場)をマッピングする

3までのステップで機能と要望企業のラベリングができたので、こちらを図にまとめると以下スライドのようになります。そうすると、要望の全体像が見えてきます。図にまとめると今要望を多く実現できているセグメント、まだ要望を実現していく前のセグメントが見えてきます。

これにより、自分達のプロダクトがどの立ち位置にいて、要望を求めている企業たちがどこにいるのかをみえてくる「地図」がみえてきます。この手法を私は「プロダクトマーケットマッピング」と命名しています。

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コンパスの作り方

地図があると、どの順序で要望を実現すべきかの道筋を定めやすくなります。

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これにより方向性は見えますが、具体的な計画に落とし込むときの要素として

  • 時間軸の概念
  • 取り組むべきテーマ
  • 取り組みによるアウトカム

の3つを付与していきます。

時間軸の概念は、具体的にどのクォーターでどの機能要望を実現するか。

取り組むべきテーマは、セグメントの要望を実現するために腰を据えて取り組む内容。

取り組みによるアウトカムは、機能要望を実現したらユーザーの価値として何を提供できるか。(B2BSaaSにおいてのアウトカムは業務インパクト)

です。これらを図に落とすと以下スライドのようになります。

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さらにブレイクダウンし、アウトカムに紐づく機能要望を何年何月に実現していくかの計画とするのが、以下スライドの右画像のようにロードマップとなります。

地図として作ったプロダクトマーケットマッピングから、計画としてテーマとアウトカムを練り上げてブレイクダウンすることで開発ロードマップを作成するようにしています。早く価値を届けるために、寄り道をしないこと、計画で失敗しないことを気をつけています。

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最後に

エアプは悪

最後に、要望を集める際にセールス、CSから抽出すると書きました。が、どうしても又聞きで二次情報になってしまうので、直接ユーザーヒアリングをする機会を意識的に作っています。それによって要望の背景を深堀したり、リリースした機能の使い心地のフィードバックを受けたりと、より新鮮な情報を得られてプロダクト計画に落とし込めます。

又聞き情報だけで知ったかぶりになってしまうことを、「エアプ」(エアプレイ)と自分への戒めのために呼んでいます。私がコードを書いて開発もしている以上、ユーザーと向き合う時間を意識的に作らなければ「エアプ」となってしまい、細部へのこだわりが減ってしまうという危機感から「エアプは悪」とイベントでは述べていました。

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参考書籍

地図とコンパスは走りながら作った方法論ですが、書籍などの体系的理解がベースになっています。B2BSaaSのプロダクトマネジメントで参考にした書籍を紹介します。

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