この記事はLayerXテックアドカレ2023の4日目の記事です。 昨日は@shun_takさんが「バクラクのデータは難しくて面白い」を書いてくれました。 明日は機械学習チームのyakipuさんの記事が公開予定となっています。楽しみですね!
こんにちは、すべての経済活動をデジタル化し、ハタラクをバクラクにしたいmakogaです。
私のチームであるEngineering Officeは「人とチームの観点からエンジニアリング組織のパフォーマンスを最大化する」というミッションを持ち、組織の仕組みの設計や運用改善を行っています。その1つにEngineering Career Ladder*1の策定があり、10月から一部のRoleで仮運用を開始しています。
Engineering Career Ladderは上手に運用すれば強力なツールとなりますが、下手をすると生産性の悪化や成長の妨げになる可能性があります。
このエントリでは策定・仮運用の過程で気をつけたことを紹介します。全てを書ききれなかったのでタイトルに其の一を付けました。特に「背景・課題についてもっとしっかり書いたほうがいいのでは?」という声が社内からあったのですが、長くなりすぎるので今回は割愛しました。読んでくれた人からの声があれば、背景・課題、進め方、3つの軸、項目の詳細、議論が分かれたところ、仮運用の結果、他の職種への広げ方など、其の二、其の三も近いうちに書いていきたいと思います。
本当に今必要なのかを考え、共有する
LayerXはコンパウンドスタートアップとして、コンパクトなチームで爆速開発してきました。バクラク事業においてはサービス開始から2.5年で6つのサービスをリリースし、利用社数は7,000社を超え、事業としてもSaaSの成長モデルである「T2D3」を大きく超える成長率で拡大を続けています。*2
この急成長期にEngineering Career Ladderを策定し、運用を開始する必要はあるのでしょうか?Engineering Career Ladderは策定だけでも軽いものではありませんし、運用が始まると従業員の時間を取られます。本当に今必要なのでしょうか?
結果として私たちはプロジェクトを進めることを選択しました。そして、ベータ版を社内に公開しコメントを受け付けるときには、下記を共有しました。
- プロジェクト発足時に抱えていた課題・背景
- 現状
- 社員数と1年以内の入社者の割合
- プロダクトロードマップとそれをもとにした人員計画
- Engineering Career Ladderの意義
このプロジェクトを進めることを選択した理由は1つではありませんが、その中でも1番のリスクだと考えたのは組織の急拡大により今まで大事にしていた文化や習慣が薄れていくことでした。私が今年の4月に入社してからも新規プロダクトのためのチームが増えました。また、ここ半年でEMになった3人は、入社3ヶ月以内でした。このような成長を続けながら、良い文化を維持し、アップデートし続けるためのツールの1つとしてEngineering Career Ladderを運用および改善していきたいと思います。
詳細の前に大枠の考え方を示す
今回策定し仮運用を開始したEngineering Career Ladderには、各グレードごとに3つの軸があり、軸ごとに複数の項目があります。それにより各グレードで求められる考え方や行動、スキルが理解しやすくなっています。
しかし、現時点では全ての項目が詳細に記載されているわけではなく、項目を読むだけで完全に理解することは難しい状態です。
そこで、もう一段大枠の考え方を示すために高いグレードに求めることを記載することにしました。
私は過去の職場でも同じようなグレード定義を策定したことがありましたが、高いグレードに求めることを一言で説明できていませんでした。
今回は代表取締役CTO兼LayerX LLM Labs所長の松本、事業部執行役員(Enabling)の名村、事業部執行役員(CTO/CPO)の榎本などとディスカッションしていくなかで「高いグレードに求めるのは不確実性が高いことを任せられること」と定義できました。
もともと私は下記「不確実性が高いとは」のような考え方をしており、それとも合致し、とてもスッキリしました。
この高いグレードに求めることという大枠の考え方があることで、理解しやすくなったと思います。
不確実性が高いとは
不確実性の高さは「対象の大きさ・複雑さ x 時間軸 x コミュニケーションおよび影響の範囲」で決まる。
Grade | 対象の大きさ・複雑さ | 時間軸 | コミュニケーションおよび影響の範囲 |
---|---|---|---|
5 | 会社 | 複数年 | 経営メンバー、会社全体、業界 |
4 | 事業 | 3年 | 事業責任者、事業全体、社外コミュニティ |
3 | プロダクト | 1年 | チーム内外のマネージャ、プロダクトに関わる全メンバー |
2 | ユースケース | 半年 | プロダクトに関わる全メンバー |
1 | 機能 | 3ヶ月 | プロダクト系メンバー |
業績評価を保証するものではない
社内のドキュメントには「ここに記載されているスキルを身につけ、記載されているとおりに行動することがそのまま高い評価に直結するわけではありません」と記載しています。
Engineering Career Ladderはあくまでも目標達成と能力開発の道しるべであり、高い業績評価や昇給を約束するものではありません。チームのアウトカムを増やすためにはどうすればいいか、個人のパフォーマンスを向上させるにはどうすればいいか、これらをEMとメンバーが検討するときのコミュニケーションツールとして活用することが重要です。
評価の際には、Engineering Career Ladderを共通言語として利用し、評価会議での議論や評価フィードバックを向上させていきたいと思います。
また、アンチパターンの一つに星取表のようになってしまうことがあると思います。グレードごとにスキルとコンピテンシーの表があり、そのマス目を埋めていくと自動的に昇給していくというような仕組みです。これは、顧客やチームではなく自分のスキルアップに目が向いてしまい、今必要なことやアウトカムを出すことに集中できないリスクがあるので個人的にはオススメできません。
そして、このような制度やツールを組織内での変化の速さや外部環境の変動にリアルタイムに追随することは現実的ではありません。それもあり、評価と直結させず、柔軟に運用しながら進化させていき、中長期のキャリアを支援していくことがよいと考えています。
最後に
このエントリはEngineering Career Ladderを作るときに気をつけたことを3つほど紹介しました。他にもっとこういうことが知りたいということがあればSNSなどで発信してもらえると嬉しいです。
また、自社のLadderと比較しながら具体的に話したい方はカジュアル面談を開いてますのでこちらから応募ください。
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*1:そもそもEngineering Career Ladderとは?という人は、DropboxやCircle CIなど多くの企業が公開していますので、”Engineering Career Ladder”もしくは”Engineering Career Ladder”+社名で検索してみてください。
*2:コンパウンドスタートアップの理解を深めたいという方は事業部長の牧迫のnoteがオススメです→コンパウンドスタートアップにおけるケイパビリティ・マネジメント|maki@LayerX