LayerX エンジニアブログ

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LayerXとMDMの異なる魅力とチャレンジ as コーポレートシステム

始めに

LayerXにはFintech事業部門があり、所属社員は三井物産デジタル・アセットマネジメント(以降、MDM) に出向しています。 今日はこのFintech事業部門・MDMのCTO室的存在について、スポットを当てたいと思います。

それぞれにセキュリティとコーポレートシステム機能をもつ部門が存在していますが、基本的には同じ方針、同じ優先順位でことに当たっていました。 それは何故でしょう?  身も蓋もないことをいうと、それぞれにおいて創業間もない時期から、私という同一の人間が兼任していたからです

しかし、新たにLayerXのCTO室長(※)も迎えた今のステージにおいては、それぞれが目指す方向性にやや違いができてきました。 本ブログでは、その違いを、事業の特性、横断組織の関与の深さ、組織構成に基づき、明確にしようと試みるものです。

※「未来の“当たり前”を作る」セキュリティ・SREのスペシャリスト星北斗が今、LayerXを選ぶ理由 https://note.layerx.co.jp/n/n0a7301aab932?gs=6a3e47a84c3a

LayerX: 多角的B2Bを目指すコンパウンドスタートアップ

事業の特性

LayerXは、主にB2B市場を主戦場としており、今後も定期的に新しい事業やプロダクトの立ち上げを予定しています。 単に新規立ち上げを行うだけではなく、扱うデータを一元集中させ、サービス間の連携や統合を図るプロダクト組織の構築を目指しています(※) 特に、LLM(Large Language Models)の技術領域には早い段階から注力し、専門の部門を設けるなどして、そのポテンシャルに賭けた事業計画をしています。 これにより、中小企業から超大企業まで、業界を問わず幅広い顧客層に対してサービスを提供できる体制を整えつつあります。

※ コンパウンドスタートアップというLayerXの挑戦 https://comemo.nikkei.com/n/n7332c93f50c7?gs=96180f7d2c32

横断組織の関与

各事業部は比較的独立して運営されています。セキュリティやコーポレートシステムに関わる主要人員は、各事業に深く関与するよりも、 それぞれの事業内で似たような役割を持つ人員をサポートし、エンパワーメントすることに重点を置いています。 このアプローチは、事業そのものへの直接的なコミットメントというよりは、事業展開を促進する間接的なチームを支援する側面が強いと言えます。

組織構成

500人規模の成長を目指しています。私の目線からは、人事やリファラル等の活躍により採用は順調に推移しているように見えます。 また、迅速な意思決定と新技術領域の利用を促進するためか、組織構造の階層化と複雑化がおこっています。

2025年度に従業員500人体制へ──法人支出管理「バクラク」展開のLayerX、シリーズAで55億円の資金調達

MDM: 信頼・誠実(Integrity)を基礎とした「新しい」金融商品のサービス提供者

事業の特性:

金融業界における安定性と信頼性を最優先し、顧客に安心して利用してもらえる金融商品の提供に注力しています。 ここまではどの同業他社様でも同じかもしれませんが、「眠れるお金(個人資産)をアクティベート」したい当社は、個人投資家の絶対数を増やしたいと考えており、そのためには個々のニーズ(例えば、許容可能なリスク)に合わせた金融商品を提供していきたいと考えています。そのニーズとは例えば、投資対象や商品性(エクイティ、デット)、リターン、透明性などです。「それなら簡単に提供すればいい」と思われるかもしれません、実際には複数の金融ステークホルダーや機能が必要となり、最終的には複数の金融ライセンスの保有が前提条件となります。この前提は、社内規程や体制にも反映され、それに適したセキュリティやコーポレートシステムの整備が必須となります。

また、投資家保護を目的とした高い透明性が(事業者として)求められ、厳格なコンプライアンス遵守レベルが要求されます。

三井物産デジタル・アセットマネジメント 会社紹介(Company Deck) - Speaker Deck

横断組織の関与:

投資家保護を最優先する以上、全ての責任を一つの部署に集中させることは避けるべきです。この観点から、職務の分離(Separation of Duties)が重要となります。その結果、横断組織であっても、事業の一部を直接的に担当することが少なくありません。これを実現するためには、深い事業知識が必要とされます。

例えば、物件を取得する側と、それをファンドとして売る側では、基本的に利益相反がでないよう、特に物件価格に関するデータが共有されないよう気をつけなければなりません。システム的にはできる、、、けど、ポリシー上はしてはいけない、という業務上の制約が非常に多くあります。

組織構成:

LayerXとは異なり、私たちは頻繁に複数の事業を立ち上げることよりも、金融商品の拡大およびその運用の効率化を重視しています。この戦略的な違いにより、創業4年目現時点でも60名弱の組織ですし、また大規模な人員計画を立てていません。それよりも、しっかりとした統制を取り入れつつも、機動的なサービス運営を目指しています。

今後、サービス運営を効率化しにいくには、プロセスをデジタル化することが、LayerXのアプローチをより浸透させていかねばなりません。 例えば、ある権限変更をする際に、毎回ワードファイルで規程を参照するのはなかなか大変です。そもそも要件が規程に関わることを認知しなければいけないことも一因です。そのペインををデジタル化していくコトに重点をおくのがLayerXです。私(たち)はこれを「ガバナンス・コンプライアンスエンジニアリング」として実現したいと思っています。

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ゼロ ->イチ段階でのコトに向かう姿勢

既存の重い業界の重い課題に対して、ジョイントベンチャーが作られ、あえてLayerXのエンジニアが出向することになった意味を考えれば自ずと答えは見えます。

それは「顧客への価値提供(アウトカム)が早いこと」です(※)

  • 使われないものを作らない
  • 仕様をシンプルにする
  • 言われた通り作らない

紙芝居レベルからでも初めて、しっかりアウトカムを最速で作っていくことが重要です。 ※三井物産デジタル・アセットマネジメント 会社紹介(Company Deck)開発速度が速い #とは(LayerX社内資料) | PPT

そのヤッテイキ性は変わりません。

下から見るか横から見るか

LayerXとMDMは、同じグループ企業の一員として、それぞれが特有の強みとビジョンを持っています。技術革新と迅速な市場対応に情熱を感じる方はLayerXが、金融業界特有の深い専門性を理解し規制に遵守しつつも「あたらしくて、おもしろい」チャレンジをしてみたい方はMDMが、合うかもしれません。 しかし、基本的にはやっていく!気持ちが最も重要ですので、双方でお待ちしております!