こんにちは、CTOの松本 @y_matsuwitter です。最近の趣味もスクワットです。体重増量中です。
本記事はLayerX エンジニアアドベントカレンダー1日目の記事となります。(10月から別なアドベントカレンダー企画が進んでいますが、こちらは別企画ですのでご注意下さい。) 折角ですので、今回は2022年のLayerXの開発組織どうだったの?というポイントを振り返らせていただきます。技術的な振り返りは別途様々なメンバーからブログが出てくるかと思いますので、あくまで組織やその運営についてという目線で書かせていただきます。
2022年のプロダクトリリース
LayerXでは「爆速開発」を重視した開発が進められていますが、今年も爆速にいくつものプロダクトがリリースされました。具体的にタイムラインを見てみると、
- 2022年5月 バクラク経費精算 リリース
- 2022年6月 PrivacyTech事業部にて、あいおいニッセイ同和損保様とデータビジネス開始
- 2022年7月 バクラクビジネスカード リリース
- 2022年8月 MDMの社内プロダクト、DAM(Digital Asset management)
- 現在、個人向け資産運用プラットフォーム ALTERNA開発中
と言った具合に5つのプロダクトや提携プロジェクトが進みました。現在進行系なプロジェクトもALTERNA含めいくつか存在しています。もちろん、既存のプロダクトも引き続き爆速に改善を続けており、2021年と比べて組織がより大きく、強くなったことでできることがますます増えているように感じます。
プロダクトラインナップを増やしT2D3を大幅に超えた事業成長を健全に達成しているバクラク事業部、運用資産1000億円を突破したFintech事業部、そして実環境でプライバシー保護を実現したPrivacyTech事業部。それぞれが事業的に大きなマイルストーンを達成した年となりました。
組織変化
そんな事業拡大・成長の中、組織も合わせて拡大しています。と言っても、いきなり数百人の組織を現在目指しているわけではなく、ユーザー体験のよい品質高いプロダクトを作るために必要な組織から逆算されたある種冷静な規模の拡大を目指しています。
まず組織図ありき、そこから各ポジションのジョブディスクリプションを設定し、そこにフィットした方を採用するという原理原則を徹底し少ないながら強力な仲間たちがジョインしてくれました。
- 入社エントリ|LayerX
- 機械学習でハタラクをバクラクにするために LayerX に入社しました #LayerX|yu-ya4|note
- 「縦で突き抜けて横でイネーブルメントしていく」意思決定の背景、お互いの印象、これからの可能性 - LayerX エンジニアブログ
- カルチャーにより実現したエンジニアの爆速立ち上がり|櫻 勇人 l LayerX|note
- メガベンチャーから “LayerX” にソフトウェアエンジニアとして転職して、コンフォートゾーンを抜け出した話 - All YoU Need Is D*
今年の大きな変化でいくと、私やmosa以外で初めて開発組織にマネージャが設置された事が挙げられます。バクラク、MDM合わせて新たに8名のマネージャが既存メンバーの中から立ち上がっています。
来年以降、心強いマネージャ陣と共に、組織拡大だけでなく、新卒採用や育成、また社内での技術的コミュニティの強化といった、長期的な開発組織成長を見据えた「人の育つ組織」への取り組みを進めていきたいと考えています。
なお、現在新卒の方々を対象とした採用と育成を本格的にスタートしていく予定ですのでご興味ある方、こちらより検討いただけますと幸いです。
Enabling Teamのスタート
2022年はもう一つ組織・プロダクト双方にとっての大きな変化もありました。Enabling Teamの立ち上げです。Enablementとは、一人ひとりの能力・可能性をBet Technologyに仕組みによって高めていく活動と考えています。開発組織の生産性だけでなく全社の力を高めていくべく、Enablement専門のチームとして立ち上がったのがEnabling Teamです。本チームは、名村さん(@suguru)のジョインとともにスタートしました。
組織には、事業一つ一つを推進・改善していく縦軸と、全体の活動を支える横軸の2つの性質の組織が存在します。Enabling Teamは横軸としてDevOps・SREと言った領域や社内向けツール開発、さらには各事業の技術的難題を突破する遊撃隊としての支援、将来を見据えたアーキテクトとしての役割を担っています。
直近で実際に進んでいるプロジェクトとしてlayeroneがあります。本プロジェクトでは、増え続け、そして複雑化が進み続けるバクラクプロダクトに対して、ビジネスに合わせたアーキテクチャ変更のしやすさを目指すモノレポとマイクロサービスをベースにした新アーキテクチャの提案となります。まだ実験段階ですが、来年にはこのプロジェクトから新たなプロダクトや既存プロダクトの進化が進むことを目指しています。
layeroneに限らず、変化させやすいこと、そのための失敗しやすく開発に参加しやすい環境を目指すことは人が育つ環境を作る上で重要と考えており来年以降も重要トピックとしてEnabling Teamの取り組みを進めていきたいところです。
OCRチームの本格的な拡大
今年最も大きくなったチームがOCRチームです。LayerXのプロダクトにおける背骨、ユーザービリティ高いSaaSの基礎となる機械学習技術を徹底的に追求するべく、既存のアルゴリズム改善だけでなく全く新規の深層学習ベースなアルゴリズム開発、さらにその改善速度を高めるための大量のデータを管理するデータ基盤開発などに取り組んでいます。
直近ではRoBERTaベースの新たなモデルを開発しプロダクトに反映させるとともに、LayoutLM周りのR&Dを行いました。下記のブログをぜひ読んでいただければと思います。
今後も、更なるOCR精度の改善や、対応可能な帳票の拡大、OCR以外のタスク種別への拡大などを見据えチームは拡大を続けていきます。
xOpsの取り組み進捗
この1年、プロダクト開発だけでなくコーポレート領域やアセマネの運用領域などをターゲットとした社内向けの開発組織も拡大していきました。ソフトウェア開発のアプローチでこうした運用領域に向き合うことで、拡大し続けるプロダクト組織や営業組織などに対して安全性と利便性の両立が可能になると考えています。
具体的には、例えばCTO室ではチームが拡大してきたことで入退社の管理を自動化するKurotoというボットが開発されました。Slackのコマンド一つで、新たに入社する方へのアカウントや権限付与、さらにオンボーディングの支援までをワンストップで行う仕組みが動き出しています。単なる自動化というよりは、オンボーディングを円滑にする仕組みのBet Technologyなアクションだと言えます。
さらに、三井物産デジタル・アセットマネジメントにおいても、アセマネ事業の一部の自動化・半自動化を実現しました。こうした取り組みをAMDXと社内では呼んでいます。取り組みの一つがDAMと呼ばれるツールで、不動産物件の運用にかかる入居や反社チェック、意思決定と言ったプロセスを自動化しつつ効率的にデータ管理を行うプロダクトを開発しました。このツールを通じて今後の投資家への資産運用状況の報告などの自動化にもつなげていく想定です。
こうした取り組みをxOpsと総称していますが、xOpsの改善に取り組む組織は今後もゆっくりと拡大させつつ、コード化・プロダクト化・自動化によって、セキュリティを守りつつの爆速を支えられる基盤を実現していきたいと考えています。
まだ出来ていない、これからやること
ここまで、取り組んできたことについて大雑把に書かせていただきましたが、当然ながら各チームまだまだ拡大途上で取り組みについても不足が多々あるように感じています。DevOps・SRE・バックエンドなど様々なJDで採用中ですのでご興味ある方ぜひご覧いただけますと幸いです。
また、特に注力というか戦略を整理してより洗練された開発を目指していく上で取り組んでいきたいポイントとしてQAとデザインが上げられます。
爆速と品質を双方維持するにはQA活動が欠かせませが、QAはまだまだ取り組み余地が大きいように感じています。現状、Autifyを活用したE2Eテストや手動テストを実施していますが、今後の爆速のためにはユニットテスト等の活動にも手を伸ばしつつ、品質担保を高度にしていく必要があります。将来のQAのあり方とも照らし合わせつつLayerXらしいQAを更に追求していきたいところです。
デザイン組織の取り組みもまだまだ戦略という観点で大きな方針が作れているわけではなく、頼りがいのある一人ひとりのメンバーのおかげで成立しているように感じています。デザイン組織のあり方、LayerXとしてデザインとどう向き合っていくのか、デザイナーの成長機会の創出などこれから取り組むべき組織的課題だらけです。来年はデザイン組織としてのあり方について戦略的に取り組んでいきます。
さらには、新卒採用と育成への着手が来年以降本格的に始まります。現時点でも毎年1~2名ほど新卒が入社しており、バクラク請求書やOCRチームなど様々なチームで新卒メンバーやインターンが活躍しています。10年20年と組織が成長し続け、一緒に働きたい仲間が集まる会社であるためには人が育つ会社であるということは欠かせないピースだと考えています。その一つとして新卒採用・育成は今後の重要トピックかと考えています。
人が育つという意味では、現状は独立独歩に複数事業が成長し始めたこのフェーズで社内の技術的知見のゆるい交流、社内外の開発者コミュニティのあり方についても改めて取り組みしていきます。
最後に
LayerXの開発組織の2022年を振り返ってみましたが、まだまだ書ききれていない取り組みも多々あり、また取り組みの足りていないポイントも沢山残っています。2023年は、個人向け資産運用サービスALTERNAのリリースなどまだまだ新たな取り組みも成長も続きます。これを支えられる開発組織のあり方を追求して行きます。
ぜひこの記事を読んで興味を持った方がいらっしゃれば、カジュアルにお話させていただきたく、よろしくお願いいたします。