LayerX エンジニアブログ

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Fintech事業部のtoCプロダクト『ALTERNA』のリリースから1年目までに心がけてきた 「ファクトベース」についての話

こんにちは。 Fintech事業部こと三井物産デジタル・アセットマネジメント(以下、MDM)でCPO/CTOをやっているサルバ id:masashisalvador(@MasashiSalvador)です。 三体で大好きなのは第二巻の水滴の部分です。はやく地球三体協会(救済派)に入りたいです。

Fintech事業部では、昨年5月に個人のお客様向けの資産運用サービス、ALTERNA(オルタナ) をリリースしました。何もない状態から金融サービスを世の中に届け、幸福なことに結構な数のお客様にご利用頂いていて、0→1のフェーズから、1→10のフェーズへと事業のフェーズが転換しつつあります。

「すべての経済活動を、デジタル化する。」ための一翼として、金融取引の生産性向上("重い" 産業のひとつとしての金融領域の課題解決)に取り組み、個人向けに「あたらしくて、おもしろい」金融サービスを提供する試みがALTERNAというプロダクトです。LayerXのいち事業部として、プロダクト開発カルチャーはLayerX流を実践しようと日々試みています。

リリースから一年が経過したこともあり、振り返りも兼ねて、これからいくつかの記事でFinetch事業部のプロダクト開発について紹介したいと思います。

まずは、LayerXの行動指針で言うと「FactBase」に該当する部分、Fintech事業部のプロダクト開発における計測と振り返りについて書きたいと思います。

外部環境が変わり続ける中で、勘や社内政治に頼らず意志決定をするために。数字や事象などファクトに従って、柔軟に、冷静に、行動をおこしていこう。 (LayerX 羅針盤v2.1 p17 LayerXの行動指針より

ALTERNA開発に埋め込まれた力:「お客様の声」

ALTERNAの立ち上げをゼロからはじめていくにあたり、チームまず大切にしたのはお客様の生の声を集めることでした。 と、言い切りたいところなのですけれど、紆余曲折あって(潜在)お客様へインタビューするという流れにいたっています。

紆余曲折の初手として、仮のペルソナの設定、先行事例のカスタマージャーニーマップを起こしてみてお客様の課題・心理とビジネス上の課題を整理することを行いました。下に示すようなテンプレートをチームに配布して、担当者を決めて記載し、集まって発表して意見を出し合うような形をとりました。

ペルソナ作成のテンプレート
カスタマージャーニーマップテンプレート

他もバリュープロポジションキャンバスをチームで作成し、お客様のゲイン・やペインに関して、チームメンバー各々が考えていることをマッピングしました。このアウトプットによって

  • チームメンバー各々が考えるお客様像についての認識がすり合わせられる
  • 事例研究で資産運用に閉じないサービスを見ることで、視野を広げつつ、どの要素を自分たちが取り入れるべきか考えることができる
  • ペインやゲインをグルーピングすることで、お客様のペインについて仮の仮説が立てられる

ことはチームとして大きな意味がありました。とはいえ「机上の話も大事だけれど、物を作る(=1つのコンセプトに決めきる)ための決定打にかけてないか?」的なことを個人的に思ったのを覚えています。 チームとしても、実際に一次情報(=ファクト)を集めることの重要性を改めて認識したので、ヒアリング(デプスインタビュー)をすることでお客様の生の声を集めはじめました。

事前準備のひとつとして、デザイナーがトンマナの候補を3パターンつくったので、ヒアリングの中でお客様に聞いてみて意見を聞いてみることにしました。ヒアリングをお願いする先は、手始めにチームメンバー・会社メンバーの知り合いなどとしました(母集団の年齢層等が偏るという問題は出るのですが、その話はまた別途)。1~2週間集中的にヒアリングの時間をとり、その期間は、ヒアリング直後に「やりました!」的な感じでヒアリングの生のメモをslackに投稿するなどして「お客様の生の声が(続々と)集まってきている」ライブ感を大事にしていたように思います。

最終的には情報をスプレッドシートに集約して、定量的・定性的な分析にかけてまとめるのですけれど、この時のライブ感はリリースがまだ先で、本当の意味でのお客様を獲得するまでには時間がかかる立ち上げ期において非常に大切なものだったと思います(「感」とかいうと、精神論めいているのですけれど、最終的にはチームとしての関心の焦点をどこにおくか、という意味で「感」はとても大切だと思っています)。結果として、お客様からの強いネガティブな意見がなかったため、トンマナのパターンを現行のパターンに絞り込むことができました。

生の声を収集する文化はALTERNA開発、ないしMDMに根付いており、商品開発(ソフトウェアプロダクトに限らない)全般でお客様の解像度を上げるアクションを取りながら、今日もまた色々な物事が進んでいます。

さて、生の声は生の声で大切だとして、ファクトというのは色々な側面から捉えるべきものです、新規開発だと(機能開発の優先度に押し負けることがおおく)検討が後回しになりがちなものがあります。 それは「計測」です。ALTERNAでは、立ち上げ当初から、実装と検討が重くなりすぎない程度に「計測(効果測定)」を大切にするように心がけました。 (実態としては、とにかくログを残す、みたいな凡事徹底なのですが、ログがあるのとないのでは天国と地獄ほどの差があります)

なぜ計測が大切か:わたしに突き刺さっているある言葉

前職で「効果計測ができないものはやっていないのと変わらない(むしろ、リソースを投下しているだけ悪い)」と言われたことが、わたしの喉元に深く突き刺さっています。呼吸困難になるほどに。「それはそうなのだが、そこまで言わなくても」 と思ったのを覚えています。とはいえ、何よりも大事な時間というリソースを投下することになるので、少しでも多くのことを持ち帰るという意味で、とても大切な考え方だと思っています。

計測(効果測定)に意識が向くことで得られることは色々あって

  • 仮に効果が出なければ「効果がでなかったこと」を出発点に深堀りすることができる
    • 悪くなった場合も同様
  • 計測値が実際に現れることで、母集団の性質に目を向けることができる
    • この「差」はモチベーションのどういった差分からきているのだろう、とか、課題のどういった違いからきているのだろう、とか
  • 計測できること=勝利条件をきめることなので、勝利条件をシャープに絞り込む観点としてつかえる
    • 勝利条件がシャープになれば、仕様を落とすことができる(=「使われないものを作らない」に近づける)
    • 仕様を議論する観点のひとつとして
  • どのくらいが効果の上限なのかを見積もることで、優先度判断に使える

などが挙げられると思いますし、自分が企画や仕様を議論するときに大切にしていることであります。 また、暗黙的に所与のものとしてしまいましたけれど、差を測るために「事前の状態」が計測できていることもとても大切だと思っています。 (ついでにいうと、測れるようにすることも、施策としては大きな一歩だと思います)

また、近視眼的になりすぎないことや、コントロールできる変数がどこにあるかを見定めるのもキモで、例えば認知率などはコントール可能ですが、急に上げることはできません。徐々にお客様に浸透させていく、そのためにはどれくらいの時間がかかるか、などをチームとして合意しておくのも大切だと思っています。

ALTERNAでの計測・分析環境

ALTERNAではDBに記録した値やGoogle Analyticsのデータ、広告データ、ログデータなどをBigQueryに集約して分析できるようにしています。細かな分析環境の工夫については分析チームとしてのブログに譲ることにしますけれど、『分析虎の巻 そのX 』などを整備して、誰でも好きなときにSQLを使って分析ができるような環境と、チーム全員が閲覧できるダッシュボードの整備も行っています。分析結果はチームの『分析リポジトリ』というページに集約しています(冒頭にあったインタビューなどは『ユーザーインサイトポータル』へ集約しています)

分析専任のメンバーがいるわけではないですけれど、チームとしては常に目を向けて、環境が整えられるようにしています。

分析虎の巻

ユーザーインサイトのポータル

分析リポジトリ(ほぼモザイクですみません。ご興味ある方はカジュアル面談などなら、軽くお見せしたりできます)

ファクトを集めること vs 判断すること

さて、ここまでALTERNA開発における計測について話してきましたけれど、計測の限界を知ってバランスを取ることも大切だと思っています。

なぜなら、最終的に判断するのはひとだからです。それは定性データに関しても定量データに関してもそうだと思います。

例えば、トンマナの絞り込みの際にヒアリング結果を利用した話をしましたが、ともすれば大胆な(あまり先行事例のない)意思決定をするのには勇気が必要です。勇気を後押ししてくれるのは、判断のためにファクトをどう捉えるかであり、チームの議論の流れとしては、可能性があるならば大胆な意思決定を後押しするためにファクトで意思をサポートすることは大切だと思っています。お客様の声を聞かなければわからないも正しいが、出さなければお客様の真の反応が得られない、のもまた正しいからです。

ほかにも、日常的に実施する施策に関しても意思決定者をサポートするために「目的」や「勝利条件」をはっきりさせるようなコミュニケーションをこころがけています。

計測値に耽溺しすぎると、計測自体が目的化したり、興味本位の分析になってしまうこともあります(自戒をこめて。まあ、それはそれで楽しさがありますけれど)

おわりに

金融領域のデジタル化、そしてそれによる『眠れる銭のアクティベイト』はまだまだ道半ばです。サービスを成長させるためには徹底的にファクトに向き合う必要があって、それを徹底することでお客様目線でサービスを作り続ける組織ができていくと信じています。

とはいえ、計測だけでは限界があり、時には目指すべきプロダクトビジョンを定め、そこに向かって逆算的に計画を立てていくことも必要になってきました。ALTERNAはまさにいま、ビジョンが必要なフェーズに入りつつあります。

ALTERNAでは一緒にプロダクト開発をしてくれる仲間を絶賛募集中です。わたし自身エンジニアとPdMを兼ねているように、事業理解を深めながら自分でてを届けるところまで一気通貫でできるのはFintech事業部全体の面白いところだと思います。

ご興味ある方はぜひ! まずは簡単なお話からでも! お待ちしています!

open.talentio.com

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