この記事は、LayerX Tech Advent Calendar 2024 の 1 日目の記事です。
Engineering Office で主に技術広報を担当している @serima です。最近は専ら対外的な活動が多いですが、実はエンジニア共有会というバクラク事業部のエンジニアが全員参加する週次のミーティングオーナーも担当しています。
本記事では、エンジニア共有会の特徴やこれまでのカイゼンプロセス、そして組織に与えた影響についてご紹介します。エンジニアリング組織の文化づくりに興味のある方の参考になれば幸いです。
エンジニア共有会とは
エンジニア共有会は、バクラク事業部のエンジニアリング組織全体のスループット向上を目指し、2022 年 10 月から開始された取り組みです。
毎週金曜日の 10:00 から40 分間という限られた時間の中で、50 名前後のエンジニアが参加し、技術的な知見の共有や課題の提起を行っています。
この共有会は、エンジニア間の情報共有を促進し、組織全体の技術力向上と連携強化を目的としています。また、チームを超えたコミュニケーションの場として、組織文化の醸成に貢献できるよう運営の工夫を行っています。
ただし、必ずしも毎回参加が必須なわけではなく、録画や議事録を活用することで、リアルタイムで参加できないメンバーも後から情報をキャッチアップできる仕組みを整えています。
会が終了したあとには、サマリを slack にもシェアし、参加できなかった方にも少ないコストでキャッチアップできるようにもしています。
共有会の変遷と目的の進化
初期の取り組み
2022 年 10 月、エンジニア共有会は「エンジニアによる技術的な共有の場」というシンプルな目的でスタートしました。当初は各チームから任意の発表者が技術的なトピックや共有事項を伝え、それに対して質疑応答を行う形式でした。
しかし、組織の拡大やニーズの変化に伴い、より多様な目的を持つ必要が出てきました。
目的の明確化とビジョンの設定
2023 年 2 月、エンジニア共有会の目的が整理され、以下のような明確なビジョンが設定されました。
- 情報共有を通じたチーム間の透明性・連携強化
- 技術的なナレッジの共有による組織全体の成長
- 建設的なフィードバックを通じた相互理解の促進
これにより、エンジニア共有会は単なる情報共有の場から、組織全体の成長と文化醸成を支える重要な場へと進化しました。
Goals / Non-Goals の定義
その後、運用の改善を重ね、現在は以下のような Goals / Non-Goals を定義しています。
これらの定義により、共有会の目的と範囲を明確にし、運営の効率化と参加者の満足度が高まるようにしています。
過去に、多くの参加者がいる中で少人数での議論が過熱し、すべてのトピックが消化できなかったことがあり、Non Goalsに「各トピックに対する議論の発展」を含めることにしました。
この経験を踏まえ、司会者は毎週この Goals と Non-Goals を読み上げ、会の目的に沿った進行ができるよう意識付けを行っています。
ミーティングオーナーの引き継ぎと運営の体制
ミーティングオーナーの変遷
当初のミーティングオーナーは、現在はバクラク事業部 機械学習 データ部長を務めている @shun_tak でした。現在までに至る共有会の基盤を築いてくれました。
2023 年 9 月、ミーティングオーナーを私 @serima が引き継ぐことになりました。引き継ぎにあたっては、これまでの知見やノウハウを継承しつつ、新たな運営体制の構築を目指しました。
持続可能な運営のための工夫
同年 10 月より、運営の持続可能性を高めるために、以下のような工夫を導入しました。
- オーナー 1 名+運営メンバー 2 名の 3 人体制
- 負荷を分散し、多様な視点を取り入れるためのチーム編成
- 運営メンバーの四半期ごとのローテーション制
- 新鮮なアイデアの導入とメンバーの成長・露出機会の提供
- 「エンジニア共有会 引き継ぎの儀」による知見の継承
- 運営ノウハウやベストプラクティスの共有と記録
現在は、kanny と Yu Ishiguro が運営を担当してくれています。彼らを含め、これまで運営に携わってくれたメンバーのファシリテーション力やアイデアによって、共有会は回を重ねるごとにアップデートされてきました。
また、組織や事業の変化に伴い、参加者のニーズの変化を汲み取りつつ、不要なコンテンツを廃止するなど、健全な運用が続けられていると感じています。
共有会のコンテンツと特徴的なコーナー
エンジニア共有会では、以下のような多彩なコンテンツを用意しています。
いくつか特徴的なコーナーを設けていますので、かいつまんで紹介したいと思います。
対応必須アナウンス
チーム間で確実な情報伝達とアクションが必要な事項を共有するコーナーです。Notion DB とテンプレートを活用し、対応期限、各チームの対応者、対応済みかどうかのステータス管理をひと目で分かるように管理するようになりました。
これまでは、管理方法に難があり対応の漏れがたまに発生してしまっていたのですが、この方法に変えてからはうまく運用が回っているように感じています。
そぼぎコーナー
運営から事前に指名された 2 名が「素朴な疑問」(通称:そぼぎ)を投げかけ、参加者全員で回答を考えるインタラクティブなコーナーです。
参加者全員から顔を覚えてもらう機会ともしたく、質問は本人に読み上げてもらうような運用にしています。結果として、エンジニア間の知見共有だけでなく、コミュニケーションの活性化にもつながっていると感じています。
直近の実例としては、このような感じです。他にも多くの面白いそぼぎがあるのですが、今回はほんの一部のみ共有します。
インフラ系のそぼぎでは、CISO 兼 DevOps チームマネージャー の kanny が 3 Minutes Networking を紹介してくれました。
このように、そぼぎをきっかけに、業務に直接関わらない分野の学びやお互いのノウハウを共有する機会がたくさん生まれています。
今週の ADR・Design Docs
直近 1 週間に作成された技術的な意思決定(ADR)や設計文書(Design Docs)を共有するコーナーです。組織全体で技術的な意思決定の背景や理由を共有し、再発明の防止や知識の蓄積を図ることを目的としています。
バクラク事業部における ADR の運用については、「エンジニアの技術的な意思決定を支えるADR - LayerXの活用事例 - 松本駿 / TSKaigi2024 Track3」にて公開されています。あわせてご覧ください。
エンジニア共有会を通じて得た気づき
ミーティングオーナーとしてエンジニア共有会の運営に携わる中で、多くの学びと気づきがありました。これらの経験は、他の組織でも参考になるかもしれませんので、共有します。
- コミュニケーションの重要性:チーム間の壁を越えた会話が、組織全体の成長につながることを実感しました。オープンな対話の場を設けることで、新たな連携やシナジーが生まれます。
- 持続可能な運営の工夫:ローテーション制や知見の継承など、持続可能な運営体制の重要性を学びました。負荷を分散し、新鮮なアイデアを取り入れることで、長期的な継続が可能となります。
- 新たな視点を取り入れることの価値:様々なバックグラウンドを持つエンジニアが集まることで、新たな視点やアイデアが生まれることを経験しました。多様なメンバーの参加が、組織全体の活性化につながります。
これらの気づきを踏まえ、エンジニア共有会のような取り組みは、組織の規模や文化に合わせてカスタマイズすることで、多くの企業で効果を発揮するのではないかと感じています。もし同様の取り組みを検討されている方がいらっしゃれば、以下のポイントが役立つかもしれません。
- 明確な目的とビジョンの設定:共有会の目的を明確にし、参加者全員がその意義を理解できるようにする。
- 持続可能な運営体制の構築:負荷が特定のメンバーに集中しないよう、チーム運営やローテーション制を導入することで、長期的な継続が可能になります。
- インタラクティブ性の重視:一方向的な情報共有ではなく、参加者全員が主体的に関われる場を作ることで、活発な意見交換が促進されます。
- 継続的な改善:フィードバックを積極的に収集し、運営方法やコンテンツを適宜改善することで、会の質を高めることができます。
最後に
エンジニア共有会は、LayerX のエンジニアリング組織の文化を支える取り組みとして、これからもアップデートを続けていきたいと思います。
この記事が、同様の取り組みを検討されている方や、組織文化の醸成に関心のあるエンジニアの皆さんの参考になれば幸いです。